前回の記事では、橋桁の線路をフレキシブルレールから自作のプリント基板を使った線路に変更しましたが、これが予想通りに位置合わせがやりやすいため、転車台周囲の線路もプリント基板を使った線路に変更したくなりました。周囲線路は数が40個と多いため結構時間がかかるのですが、意を決して変更することにしました。Nゲージの転車台のときから、周囲線路の位置合わせは、目分量で行うとずれてくる等で試行錯誤の繰り返しとなり、手間がかかる作業のため根気の要る作業でした。
周囲線路は枕木の重なりを避けるため隣り合う枕木が互い違いになるように配置するので、2種類の形状(A、B)が必要です。それぞれ20個づつの製作となります。橋桁の線路と同様にNCフライス盤を使用、刃物は直径1.5mmの2枚刃超硬エンドミルを使用。回転数は3万回転としました。前回書き忘れましたが、PROXXONフライス盤付属のモータはここまで回転を上げられないので、アタッチメントを自作して5万回転まで可能なスピンドルを取り付けられるように改造済です。ただしこのスピンドルはエアーを流した場合に5万回転可能で、流さない場合には3万回転に制限されますが、今回はエアーなしの3万回転でよしとしました。
画像1のNCフライス盤で厚み1.6mm、銅箔35μmの紙フェノールのプリント基板(一般品)を枕木形状A、B1枚づつ、計2枚をカットしていきます。切削範囲がもっと広ければ一度にたくさんの枕木をカットできるので作業効率がよいのですが、今回は2枚程度が限界のようです。
枕木図面はイラストレータで作図したあとDXFファイルに変換し、オリジナルマインドで購入したCAMで加工条件設定後にGコードに変換します。そしてこのGコードファイルを、これもオリジナルマインドで購入した制御ソフトで読み込み、NCフライス盤を操作します。
切削中は粉が出るので掃除機で吸い取りながら行います。掃除機はサイクロン式だと粉により目詰まりを起こすようで、次回はフィルタ式の掃除機でやろうかと思います(効果は分かりません)。
カットした枕木が画像2です。(画像2の枕木は切り込み深さが浅く不良品となったものです。適当な画像がなかったので、悪しからずこの画像を使用しました)中心の長穴は線路取り付け用です。線路方向に調整用の遊びを設けています。線路横方向にはほとんど余裕がないので、ねじで取り付ければ、角度がきっちりと出る(であろう)という思いです。下側の溝はジョイナーが入る部分です。このように溝をつけておくとフレキシブルレールを挿入したときの底部逃げの役割と、ジョイナー挿入時に溝の端部により半分入ったところで制止されるので、レール接続作業がしやすいのでは思いました。
画像2は全面が銅箔のため、レール部、配線部の銅箔を残して、それ以外は除去する必要があります。NCフライスで削り取る方法もありますが、基板の一部を削ることになり強度が弱くなるのではと思い今回はエッチングで銅箔を除去することにしました。
エッチングは銅箔を残したい部位をマスキングしてから、エッチング液に浸して銅箔を溶かす方法です。今回は市販のスプレー塗料でマスキングすることにします。塗料でマスキングしたい部位以外をマスキングテープでマスキングし、塗料をスプレー、乾いたらマスキングテープをはがすとマスキングの出来上がりです。
鉄用の塗料だと基本的に非鉄金属には不向きなのではと思い、前回はプライマのみを使用したのですが、この塗料は透明なので塗れたかどうか判別しづらいため、今回はプライマをスプレー後に通常のラッカーをスプレーするという邪魔くさい方法を取りましたが、通常のラッカーのみでもよいような気がします(分かりません)。
塗料はエッチング液により浸食されるとエッチング中にマスキングがはがれてうまくパターンが無くなる場合も考えられるので、今回はできるだけ厚めにスプレーしました。また、マスキングテープが密着していないと、スプレー時にテープの隙間から塗料が入り込んで、エッチングしたい部分がエッチングされず銅箔が残ってしまう等の不具合となります。まあ、あとでカッターナイフ等で不要な銅箔を削ればよいのですが。
マスキングまで完了したのが画像3です。
次はエッチングです。エッチング液はサンハヤトのエッチング液を使用しました。エッチング液の状態によりますが、今回は10~15分程度かかりました。エッチング中は容器を揺らすなどして、液をかくはんするほうがよいです。エッチング液は複数回使用できるので、容器に入れて次回のエッチング用に取っておきます。なお、廃液として処理する場合は排水口に流しては絶対にダメです。サンハヤトの説明書通りに処理する必要があります。
画像3のプリント基板をエッチング液に浸してエッチングしたのが画像4上です。
電線のはんだ付け用の穴をあけたのが画像4下です。電線のはんだ付けは被覆をむいた電線を穴の下側から挿入してはんだ付けします。このようにすると電線に無理な力が加わっても銅箔パターンがはがれることがないかと思います。パターンの端っこに直接電線をはんだ付けすると銅箔がはがれる恐れがあります。
そして画像4の基板に前回同様にレールをはんだ付けします。レールの間隔と枕木との位置関係が重要なので今回もレーザーカットで作った簡易アクリル治具を使用します。画像5は治具に枕木とレールをはめ込んで、はんだ付けにより仮止めしたところです。こての温度は設定最大の450度に設定しました。これぐらいの作業であればアクリル治具が溶けるようなことはありませんでした。
治具から取り外し、前回同様アルミの固定はさみで固定しながらはんだ付けします。銅箔の部分も銅が酸化する前に、はんだメッキをしておきます。
電線をはんだ付けで取り付けたところが画像7です。進行方向(転車台に入る方向としています)に向かって右側がプラス極(赤)、左側がマイナス極(黒)にしています。
塗装したのが画像8です。塗料はつや消しレッドブラウンのスプレーで行いました。レール上面の塗料は溶剤を浸した綿棒でぬぐい取ります。
これら線路を40個作るのは結構大変でしたが、何とか完成しました。そして、転車台の周囲に配置したのが画像9です。画像9上の橋桁下側の線路間隔が見ての通り若干(0.2mm程度)広いのが気になったため、橋桁の枕木をヒートガンで熱して外し、再度ゲージ(ゲージも当初のものから改良を加えて精度をよくしました)に当ててはんだ付けしなおしました。
画像9下の画像は以前投稿した画像で、レールを短く切断後、枕木の長さも整えたフレキシブルレールをねじで固定したものです。この方法ですと、周囲線路が長手方向、左右方向に自由度がありすぎて、位置合わせが難しかったのですが、画像9上の新しい方法では簡単に位置合わせが可能かと思います。
フレキシブルレールを取り付けたのが画像10です。当初の思惑通りジョイナーの半分くらいのところで制止しているのが分かります。